『湘南左足ブレーキ』考案までの経緯
私は20代と50代にペダルの踏みで九死に一生を得ました。何れもブレーキペダルを踏んで一時停車していた時に突然発進し、制御不能になりました。ペダルの踏み換え操作は行っていないので、車両になんらかの問題が生じたのではないかと思いました。しかし、落ち着いて考えてみると、この推測が正しいとは思えなくなり、訳が分からなくなりました。そして不可解な恐怖体験はトラウマになり、長い時が流れました。
二度あることは三度あると言いますが、2017年に三度目の踏み間違いによる“暴走未遂事件”が起きました。
愛車に乗り込み、スタートボタン(スイッチ)を押した瞬間、エンジンが爆音を立てて吹き上がったのです。「エンジンを切るしかない!」と思い、即座にボタンを押し直しました。その直後に右足の状態を目視確認してみると予期していなかった光景が目に飛び込んできました。
この経験がなければ、ペダルの踏み間違いのメカニズムは分からないままだったし、右足用ブレーキペダルを用いた”公道車のペダル様式”は設計上の欠陥があるペダル様式であることに気付くことは一生なかったでしょう。
この時の車は以前のものとは違いブレーキペダルを踏んでいなければエンジンを起動出来ない構造になっていました。
私がボタンを押した時にエンジンは起動したのですからブレーキペダルは踏まれていた証拠になります。また、この状態でエンジンが吹き上がったのですから同時にアクセルペダルも踏み込んでいたことになります。
エンジンを切り、右足がどうなっているのか見ると足先はブレーキペダルの上に踵側はアクセルペダルの上に乗っていました。
右足がなぜこのようなポジションになったのか説明します。
私は椅子や運転席に座る場合、腰痛を緩和する為に、いつも左尻に体重を乗せていました。上半身が左側に傾くこの姿勢で運転席に座ると脚部は連動するので、膝は左側に倒れます。更に右足のかかとが床にしっかりと固定されていないとかかとは足先を支点にしてアクセルペダルの右側まで回り込むことがあります。
この時、ひざが伸びてかかとが押し出された為、アクセルペダルが踏み込まれてしまったのです。
過去二度の“暴走事件”も姿勢の崩れが引き金になっていたことが明らかになりました。
実証実験を続けた結果、ひざか左右どちらかに倒れる姿勢や動作(詳細は後述)はペダルを踏み間違え易いことが分かりました。
また、ペダルの踏み間違いが起きる状況や“ペダルの踏み間違いを助長してしまう要因“を複数特定しました。
AT車による『ペダルの踏み間違い事故』は運転者に右足だけでアクセルとブレーキを操作させる為にブレーキペダルをアクセルペダルに近接させて設置した公道車のペダル配置の欠点が顕在化した事故です。
間違えてアクセルペダルを踏んでしまった時、動力がダイレクトに車輪に伝わるAT車はMT車とは異なり対処することが難しく、判断を間違えると制御不能になります。高齢者は身体機能が低下しているので対処できずにアクセルペダルを踏み続けてしまい、死亡事故に至ることがあります。
クラッチペダルを設置した車の発明によって右足用のブレーキペダルを用いたペダル様式が生まれました。その後に登場したAT車にも右足用ブレーキペダルを用いたペダル様式を採用したことでこの危険なペダル様式は公道車のペダル様式として確立してしまいました。
右足だけで目視もせずに近接している二つのペダルを踏み換えながら運転しなければならない“危険なペダル様式”は運転者にペダルの踏み間違い事故を誘発させています。
また、ペダルの踏み間違い事故以上に甚大な被害を出し続けている重大な欠点(後述します。)があることにも気付きました。
私は慢性腰痛の為に上半身を左側に傾けなければ運転できなかったので、このペダル様式のままでは安全に運転出来ないと思いました。
ブレーキペダルがアクセルペダルに近接していなければ運転姿勢の如何に関わらずペダルの踏み間違いは起きません。これは実証実験によって確認しました。
左足用のブレーキペダルを設置すれば問題は解決出来ると確信しました。この時、子供の頃に何度も乗った右足でアクセル、左足でブレーキを操作するゴーカートが頭に浮かびましました。
左足をブレーキペダルの上に置いたまま運転出来る左足用のブレーキペダルは市販されていなかったので自作しました。
コストパフォーマンスを考えて、部材は全てホームセンターで入手出来るものに限定し、最小限の加工で製作出来るように設計しました。一基当たりの実費は数千円程度です。販売価格はまだ未定ですがが外注生産で4万円以下に抑えたいですね。
左足元にブレーキペダルを設置するスペースがあればどのような車でも設置出来るはずです。
プロトタイプを2017年に自車の床にビス止めして設置しました。2023年現在、5年間で3万キロ以上走行しています。